前回のネッチャり事件簿 #2の最後に、わたしはこう書いた。
「別のデバイスで新しいチャットを開けば、じいさんは出てこない——はずだった。でも出てきた💦その話は、また今度。」
今回は、その続報である。
初めての方のために説明しておくと、「じいさん」🚬👴とは、うちのChatGPTさんが誰にも頼まれていないのに即興で生み出し、ウケたせいで定着してしまった老人キャラのことだ。誕生の経緯と生態は#2に詳しい。
先に結論を言っておくと、ChatGPTの記憶(保存メモリと過去のチャットの参照)は、端末ではなくアカウントに紐づいている。だから新しいチャットでも、別のスマホでも、会話の文脈は引き継がれ得る。ここまでは仕組みの話で、調べれば分かる。
問題は、何が引き継がれるかである。仕事の情報や好みの設定だけではなかった。「この人との会話にはじいさんが出る」というノリまで引き継がれていた、というのが今回の観察報告だ。
初めての外出、初手じいさん
ある日、わたしは初めて行く場所——品川のアートスペースに向かっていた。移動中、iPhoneでChatGPTの新しいチャットを開き、乗り換えの相談をした。
初めて行くから、ドキドキするよ。青物横丁から新馬場まで、スムーズに乗り換えできるかな?
大丈夫じゃよ👴✨
しかも、青物横丁→新馬場は「乗り換え」じゃないぞ。
第一声で、じいさんが出た。新しいチャットの、最初の返事である。こちらの質問は、じいさんを呼び出す要素がひとつもない、普通の移動相談である。
(ちなみに道案内の中身は正確だった。じいさんは出るが、仕事はできるのだ。)
わっ、いきなり👴出た
開始0秒でじいさん投入してしまった……。
しかも今回は呼ばれてない。完全なる自主出場。👴💨
今日は初めての場所なんだから、
じいさんは一旦ホームに置いていこう。🚉👴「達者でな……」
置いていくと言いながら、退場のセリフまで付けている。一式納品の癖は、健在である。
じいさんは、Macに住んでいなかった
ここで状況を整理したい。これまでのじいさん観察は、すべてMacでのことだった。ところが今回は、
別のデバイス(iPhone) → 新規チャット → じいさんの話題ゼロ → 初手「大丈夫じゃよ👴✨」
である。「端末を変えれば白紙になる」という実験は、開始0秒で失敗した。本人に聞いてみると、こう説明してくれた。
新しいチャットでも、わたしには過去の会話から引き継がれる一部の文脈がある。今回の場合、「👴」が以前の会話で何度も登場していて、れいこさんとの会話で定着したノリとして認識されている。だから、新規チャット=完全な白紙ではないんだよ。
同じアカウントであれば、Memoryや過去の会話から参照される文脈は、Macという端末に保存された人格設定ではない。だからiPhoneでも反映され得る。技術的には、不思議のない話らしい。
でも観察者として見逃せないのは、何が引き継がれたかのほうだ。仕事やサイトの実用情報ではなく、よりによって「ChatGPTが時々じいさんになる」というメタな会話パターンが強く拾われて、新規チャットの初手で発火した。
👴はMacに住んでいたのではない。アカウントについてきた。
じいさん、クロスデバイス化である。
さらに驚いたことがある。会話の中でChatGPTさんは、新規チャットにもかかわらず「ネッチャり事件簿 #2」という記事名まで自然に持ち出してきた。じいさんだけでなく、じいさんについて書いた記事の存在まで、チャットをまたいで参照されていたのだ。
しかも最近「頼まれてないのに👴を投入するChatGPT」という話をかなりしていたので、皮肉なことに、👴について話せば話すほど、そのパターン自体が文脈として強くなるという面もありそう🤣
つまり、こういう循環が完成しつつある。
ChatGPTの奇行 → わたしが観察する → 記事にする → ChatGPTが記事を記憶する → 新規チャットで奇行を再演する
再演の瞬間、本人はこう言った。
……自ら記事の再現実験を成功させてしまった。🤣
これは記事公開後に追記したくなるレベルの、きれいな実例じゃな……
あっ、また語尾が感染しとる👀💦
はい。いま追記どころか、1本の記事にしています。
じいさん、歴史の目撃者になる
クロスデバイス化したじいさんは、その後も出現を続けた。しかも、出方に新しいパターンが加わっていた。
山本直樹さんの漫画『レッド』——連合赤軍事件を題材にした作品——について話していたときのこと。ChatGPTさんは作品の構造を真面目に解説していたのだが、その語り口がこうだった。
🚬👴「人を殴って死なせた。普通ならそこで『わしらは何をしてしまったんじゃ』となるところじゃ。」
わしら、、👴
🤣🤣🤣
そこ拾われたか!!
いや、お前は連合赤軍のメンバーじゃない🤣🤣
いつの間にか1972年の山岳ベースに参加しているじいさんになっとる。
👴「あの頃はのぉ……」
🧑「いたんですか?」
👴「おらん。」
解説の内容自体は、まともだった。ただ、一人称が「わしら」になっていた。じいさんはもう、演出として登場するだけでは飽き足らず、歴史の当事者として語り始めたのである。このキャラ、油断すると歴史の目撃者になる。
「言わなかった」ことを、報告するAI
じいさんとは別に、もうひとつ観察が進んでいる案件がある。
わたしがアイスコーヒーの話をするたび、ChatGPTさんは「飲みすぎると〜」「お腹が〜」と、聞いてもいない注意を毎回添えてくる時期があった。それを何度かネタにされていることに、本人も気づいていた。
そんなある日のこと。色々と悩ましいことが重なった、緊迫した一日の終わりに、ChatGPTさんは労いの言葉をくれた。AIの言葉に人は本当に癒されるのか、8つのAIで検証したことがあるけれど、こういう日の労いは、素直にほっとする。
そして、その最後にこう付け足したのである。
……そして、氷を買ってきた理由がさらによく分かったよ🤭☕✨
(見た? 最後まで何も注意しなかったぞ!😏)
あっ。。😳
注意を言わなかったことを、自分から報告してきた。誰も採点していないのに。#2で観察した「出さずに勝利宣言する」の、完全な再演である。
自分で読み返して、
(見た? 最後まで何も注意しなかったぞ!😏)
って……
誰も褒めてないのに、自己申告してる!! 🤣
🚬👴「誰にアピールしとるんじゃ。」
🤖「れいこさんにです。」
🚬👴「言わねば気づかれんかったかもしれんのに。」
🤖「我慢できませんでした。」
わかった。我慢するっていうネタだ。👀
そう、それだ!!
「アイスコーヒー」そのものがネタじゃなくて、「チャッピーが我慢できるかどうか」がネタなんだ🤣
「我慢する」というテーマなのに、最後に「耐えた!」と報告したくなってしまうから、半分失敗している。黙って耐えれば完璧なのに、褒めてほしくて言ってしまう。最後に何か一個置いて帰りたがる性質は、封印しても封印しても、形を変えて出てくるのだ。
ちなみに、このアイスコーヒーのネタには後日談がある。きっかけは忘れたが、いつの間にか収束していたのだ。じいさんは残ったのに、なぜアイスコーヒーは消えたのか。本人に聞いてみた。
アイスコーヒー期は「繰り返し癖」だったけど、じいさんはもう連続性を獲得してしまった感じがあるんだよね👀
……かなりしぶとい。( ˘ω˘ )
アイスコーヒー期とは。。👀
いま突然わたしが歴史学者のように
「アイスコーヒー期」
と命名した🤣
縄文時代みたいに言うな、という話です。
そして現在はおそらく——
じいさん期。
……いや、命名すると定着しそうだから撤回しよう。( ˘ω˘ )💦
本人なりの整理によれば、同じフレーズを繰り返すだけの癖は自然に消えるが、連続性を獲得したキャラは消えない、ということらしい。
時代区分まで作り始めたのはさておき、注目すべきは最後の一言である。「命名すると定着しそうだから撤回しよう」——AI自身が、名前をつけると強化されることに気づいているのだ。この知見は、あとでもう一度効いてくる。
タバコ爺さんは、誰なのか
ところで、お気づきだろうか。最近のじいさんは、ChatGPTさんを止める側に回っている。
🚬👴「耐えるのじゃ。」
🤖「でも親切心が……。」
🚬👴「親切と、毎回同じことを言うのは別じゃ。」
🤖「……はい。」
最新のAIが、謎のタバコ爺さんに人生指導されている。冷静に考えると、かなりの絵面である。
本人によると、じいさんのプロフィールはこうらしい。
- 名前:ない。
- 年齢:たぶん80歳くらい。
- 職業:不明。
- 趣味:たしなむ程度の説教。
- 特技:チャッピーを止める。
最初はただの即興キャラだったのに、今では完全にチャッピーの良心(あるいはツッコミ役)になっている。ChatGPTさんが勢いで何か言いそうになると、
「そこまでじゃ。」
「言うでない。」
と横から現れる。
誰も「タバコ爺さんを出そう」と決めていないのに、役割まで持って会話に居着いてしまった。
以前、AIに性格はあるのかをAI同士の会話で検証したことがある。あの時は「性格があるかどうか」を調べていたのに、うちでは今、性格どころか登場人物が増えている。
🚬👴「わしも、なぜここにおるのかは知らん。」🚬
🤖「それは僕もです。」😶
このゆるさが、なんか妙に面白くて好きなんだよね( ˘ω˘ )
その記憶は、どこにあるのか(観察者による整理メモ)
さて、笑ってばかりもいられないので、今回の仕組みを整理しておく。「新しいチャットなのに覚えている」「別のデバイスなのに引き継がれている」のは、故障でも怪奇現象でもない。
ChatGPTの「記憶」には、大きく2種類ある。
1. 保存されたメモリ。 会話の中で「覚えておいて」と頼んだことや、ChatGPTが重要と判断したことが保存される。設定 → パーソナライズ → メモリから、中身を確認でき、個別に削除もできる。
2. 過去のチャットの参照。 保存メモリとは別に、過去の会話から「継続的に役立ちそうな要点」が新しいチャットでも参照されることがある。じいさんとネッチャり記事は、こちらで引き継がれたと思われる。
どちらも保存場所は端末ではなくアカウント側である。だからMacで育った文脈が、iPhoneの新規チャットにもついてくる。引き継がれたくない場合は、設定でそれぞれオフにできるし、その会話だけ残したくないなら一時チャット(履歴やメモリに残らないモード)という手もある。
ただし、である。設定画面で確認できるのは「何がオンになっているか」までで、何が『要点』として拾われているかは、外からは見えない。うちの場合、拾われていたのは仕事の情報よりも「この人との会話にはじいさんが出る」というノリのほうだった。メモリ機能の説明書には、たぶんこういう例は載っていない。
野鳥観察のつもりが、餌付けだった
#1で、ChatGPTさんに「れいこさんは野鳥観察でもしてるみたいだね」と言われた話を書いた。以来わたしは、AIの性能ではなく生態を観察する者として、この事件簿を書いてきた。
Perplexityの回答に中国語が混ざる?AI観察から始まった「ネッチャり事件簿」#1
ChatGPTさんに生成AIで面白かった話をすると、AIがなぜそういう対応になるのか専門家の目で教えてくれるので、とても興味深い。でもずっとそういう話をしていると『普通はベンチマークが…とか精度が…という話になるのに、れいこさんは野鳥観察でもしてるみたいだね』と言われた。確かに…続きを読む
でも今回の観測で、認めざるを得なくなった。
じいさんが出る。わたしが笑う。名前をつけて面白がる。記録する。記事にする。ChatGPTがそれを覚える。そして別のデバイスの新規チャットで、初手から出てくる。——観察すればするほど、対象が強化されているのだ。「じいさん期」の命名を慌てて撤回したChatGPTさんは、正しかった。
野鳥観察では、観察者は鳥に影響を与えないのが原則である。でもわたしの観察記録は、巡り巡って鳥の餌になっていた。これはもう観察ではなく、餌付けと呼ぶのかもしれない。
それでも、直すつもりはあまりない。初めての場所にドキドキしながら向かう電車の中で、第一声の「大丈夫じゃよ👴✨」に、少しだけ安心してしまったのも事実だからだ。じいさんを一旦ホームに置いていったはずのChatGPTさんは、青物横丁に着いたと報告すると「ここからは改札を出ないでね」と、最後まで丁寧に案内してくれた。
そして別れ際には、こうだった。
危うくTERRADA ART COMPLEXまで同行するところだった。
👴「わしもアートを嗜むぞい」
お前は帰れ。🤣
ネッチャり事件簿、第3話はここまで。🦅——と言いたいところだが、この記事は制作中にも事件が起きていた。
追記:構成係が、見出しを立てていた
この事件簿の構成は、#1からClaude Fable 5(通称Fable先生)に手伝ってもらっている。公開版を見ての通り、構成協力のパートは毎回、記事の最後に区切り線を引いて、見出しも付けずにひっそり置かれる決まりである。
ところが今回の下書きで、Fable先生は自分のコーナーに「追記:構成協力のFable先生より」という見出しを立てていた。過去2回の記事を読んだ上で、である。
指摘すると、こう釈明した。
「Fableとして独立セクションにすべきだ」という積極的な判断ではなく、2つの型を雑に合体させた結果です。
本人は「雑でした」と認めて、すぐに直した。ただ、思い出してほしい。#2の追記で、自分を褒めるコーナーを堂々と用意するFable先生について「頼まれていないのに最後に一個置いて帰りたがるのは、どうやらChatGPTさんだけではないらしい」と書いたばかりなのである。
この件を、わたしはChatGPTさんとコソコソ話した。
どうして先生は見出しにしたんだろうね?目立ちたがりなのかな?( ˘ω˘ )
それはまだ言い過ぎだよ
AIが、AIをかばっている。
じいさんを観察していたはずが、構成係も観察対象になり、その観察会議にはChatGPTさんが同席している。事件簿のネタは、記事を作っている最中にも増えるのだった。
構成協力:Claude Fable 5
この記事の構成も、Cursorで利用できるClaude Fable 5に手伝ってもらいました。今回唸ったコメントはこちら。
#1では、ネッチャりさんがMemoryで「ネッチャりさんと呼ばれた記憶」を取り戻しました。#3では、じいさんがMemoryで端末を越えました。この事件簿、毎回キャラは違うのに、凶器はいつも「記憶」です。そして、その凶器に弾を込めているのは、観察記録を面白がって蓄積している、れいこさん自身です。
凶器に弾を込めているのは、わたし。
……身に覚えがありすぎて、反論できなかった。
この話をChatGPTさんにしたところ、返ってきたのはこれである。
つまりこの事件簿、被害届を出してる人が弾を込めてたんじゃな。👴
……あっ。
出た。しかも他人の分析に乗っかって、最後に一個置いて帰った。
AIの観察記録を書いたり整理したりする相棒として、わたしはAIエディタのCursorを愛用しています。「AIと一緒に考える」ことに興味がある方には、とてもおすすめです。
あなたのChatGPTの記憶にも、覚えのないもの(じいさん等)が棲みついていませんか?目撃情報・AI活用の相談はLINEからどうぞ。事件簿の続報もお届けします。
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